「会社をこれから作る方」「初めて会社を作った経営者・実務担当者の方」へ
社会保険労務士から、おおまかな手続きポイントを解説します。
1.会社設立後に必要な労働保険・社会保険の手続き
会社を設立すると、まずは法務局で登記を行い、税務署や都道府県税事務所への届出を進めるのが一般的だと思います。しかし、事業を始めるうえで忘れてはならないのが「労働保険」と「社会保険」の加入手続きです。
これらは従業員の安全や生活を守るための制度であり、加入が遅れるとアクシデント(保険事故、例えば業務中のけがや私傷病など)が発生しても保険給付が受けられなくなったり、事業主が費用を負担するなどのリスクが発生するおそれがあります。
特に初めて会社を設立する経営者の方は、「従業員がいないから、まだ関係ない」と誤解されることがありますが、法人であれば役員だけでも社会保険の加入は必要です。これは会社設立後の重要なステップとして、必ず押さえておきたいポイントです。

図:社会保険・労働保険
(広義)と(狭義)の違いは?
広義とは上図のように労働保険も含んだ概念で、分かりやすいのは求人広告の「社会保険完備」あるいは「社保完」という表現がこれに該当します。全部完備しているから安心して仕事できます、という感じですね。
これに対し狭義は、年金と医療(介護も含む)に特化した意味で使われる場合を指します。「社会保険」という語を目にしたときは、どちらの意味でつかわれているのかを意識して読むと理解しやすいことがあります。
2.労働保険の手続き(労災保険・雇用保険)
「労働者災害補償保険(労災保険)」と「雇用保険」を総称して「労働保険」といいます。
労災保険は、従業員が業務中や通勤途中にケガや病気をした際に補償する制度で、原則として従業員を一人でも使用する全事業所が加入しなければなりません。
事業を開始し、従業員を雇用した時点で「労働保険 保険関係成立届」を、開始した日の翌日から起算して10日以内に所轄労働基準監督署へ提出します。また、保険料を納付するために、事業開始日の翌日から起算して50日以内に「労働保険 概算保険料申告書」も所轄労働基準監督署・金融機関等へ提出します。
(農林水産業・建設業等の手続きは、上記とは異なります。)
雇用保険は、従業員が失業した際の生活を支える制度です。
こちらは従業員(1週間の所定労働時間が20時間以上、かつ継続して31日以上雇用されることが見込まれるもの)を雇ったときに加入します。労災保険の手続き後に「雇用保険 適用事業所設置届」を、適用事業に該当した日(従業員を雇用する事業を開始した日)の翌日から起算して10日以内に、所轄公共職業安定所(ハローワーク)へ提出します。また、雇用保険の被保険者となる従業員ごとに「雇用保険 被保険者資格取得届」を設置届と同時に提出します。
その後、加入要件を満たした従業員を雇入れたときは、「雇用保険 被保険者取得届」の提出期限は「雇入れた日の属する月の翌月10日まで」となります。
3.社会保険の手続き(健康保険・厚生年金)
社会保険は主に「健康保険」と「厚生年金保険」の2つを指します。法人であれば、従業員がいなくても会社として加入する義務があります。設立後5日以内に「健康保険・厚生年金保険 新規適用届」を所轄の年金事務所へ提出します。また、社会保険の加入要件を満たした従業員と役員については、加入者ごとに「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」を新規適用届と同時に提出します。
その後、加入要件を満たした従業員を雇入れたときは、「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」の提出期限は雇入れた日から5日以内となります。
社会保険は、業務外の病気やケガの際の医療費の自己負担を軽減し、また、老後の生活を支えるために年金などを支給する制度です。経営者自身の生活にも直結するため、会社を設立したら早めに手続きを進めることが大切です。
4.毎年必要な定期手続き
会社を運営していくうえで、毎年必ず行う手続きがあります。労働保険では「年度更新」があり、6月1日から7月10日の間に前年度の保険料の確定精算を行い(確定保険料)、同時に当年度の保険料を概算額で申告納付します(概算保険料)。
社会保険では「健康保険・厚生年金保険 被保険者報酬月額算定基礎届」の提出が7月1日から7月10日にあり、これによって従業員の標準報酬月額を決定します。また、賞与を支給した際には「健康保険・厚生年金保険 被保険者賞与支払届」を支給した日から5日以内に提出します。これらの手続きは、年間スケジュールに組み込んでおくと安心です。
5.まとめ
会社設立後の労働保険・社会保険の手続きは、制度の目的や提出先が異なるため複雑に感じるかもしれません。しかし、流れを押さえておけば決して難しいものではありません。まずは「会社として加入する手続き」と「従業員ごとの手続き」を分けて整理し、自社の状況に合わせて必要な手続きを確認することが大切です。制度を正しく理解し、適切に手続きを進めることで、会社の信頼向上と従業員の安全と安心の確保につなげて行きましょう。